LINKS COLUMN OTHERS COLUMN #1 あなたにとって眼鏡とは? そんな問いかけに対して、筆者の主観のみで綴ってもらう本企画。 第1回目は、「白山眼鏡店」の愛用者としても知られる みうらじゅんさんが登場です。 photo: Kengo Shimizu 白山と共に。 「おい、そこのメガネ!」 と、呼ばれるのが嫌だった。 “メガネしか特徴ないのかよ”と、自らツッ込みを入れたけど、確かにメガネ以外、これといった特徴がなかった僕は仕方ないなと諦めた。小学生でメガネ・デビューを果し”そこのメガネ”はコンプレックスをずっと抱えたまんまだったけど高校生になりロックを知ったことで救われた。 と、いっても僕の場合、WジョンのWメガネに。Wジョンとは、ジョン・レノンと、エルトン・ジョン。憧れの二人は「おい、そこのメガネ!」と呼ばれることもないロックスター。僕がコンプレックスに思ってたメガネも二人にとっては武器のように見えた。 特にエルトン・ジョンのメガネは毎回、アルバムが出る度に違っていて、『ピアニストを撃つな!(’73 )』の中ジャケ写真でかけていたティ アドロップ型のオレンジ色のレンズメガネがカッコ良くてシビれた。強度の近眼とみえ、そのレンズのブ厚さも相当なもんだったけど、そこがまたいい! と、僕は思った。だって、ロックなんだから。 上京してジョン・レノンのような丸いフレームの度付きサングラスを作って以来、ずっと白山で買ってる。フツーのメガネもあるけど、サングラスだけで数十個。幼い頃からの収集癖で度が合わなくなったメガネも未だ大切に持ってる。ちょっとブッ飛んだフレームのサングラスもあるが、若い頃はまだまだメガネに勝てなくて当時の写真を見るととても恥ずかしい。「夜なのにサングラス?」「風呂に入る時までサングラスなの?」と、まわりから色々と注意されたこともあったけど、それは全て”ロック”のせい。Wジョンもボブ・ディランも度付きサングラスを追い越して自分の身体の一部としてきた。だから僕もそれを見慣ってどんな時もかけ続けNEVERならない。そう思ってる、今も。 キーポン白山眼鏡にしてるのもそんな理由からかな。だってどのフレームもロックぽくてカッコイイ! もし、似合わないものがあったとしたらそれは僕が、まだメガネに勝ててないからだと思う。 近視、乱視、その上、老ガンズ! とくりゃ度付きサングラスの迫力が違う。ロックをさらに遡ってブルーズメンの域である。もう誰も何も言わなくなるだろう。長い僕のサングラス史はいずれ遺影で証明されるはず。白山とともに歩んだメガネ人生だもの。 PROFILE みうらじゅん 1958年京都府生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなど幅広く活躍。"マイブーム""ゆるキャラ"などの命名者としても知られる。