LINKS COLUMN OTHERS COLUMN #3 あなたにとって眼鏡とは? そんな問いかけに対して、筆者の主観のみで綴ってもらう本企画。 第3回目は、「白山眼鏡店」の愛用者としても知られる竹中直人さんが登場です。 photo: Kengo Shimizu 白山眼鏡店とぼく 「白山眼鏡店」との出会いはぼくがまだ27歳だった頃の夏、お笑いでデビューした時です。ぼくはまさか自分のやっていることが世の中に受け入れられるとは思っていなかったので、とても怖かった時代です。冷たかった人が優しくなったり毎日が不安の日々でした。 そんな中で出会ったのが当時渋谷PARCOにあった「白山眼鏡店」でした。お店に初めて入った時はとても感動しました。眼鏡にはこんなにも種類があるんだ!って。あの感動は今も心に残っています。芸能界という世界でやってゆく自信がなかったぼくはそこで何種類もの眼鏡を揃え、自分じゃない人間になれば生きていけるんだと思いました。 原田芳雄さん、松田優作さんは憧れの俳優でした。 おふたりが掛けているサングラスには憧れましたね。また、ジャック・ニコルソンが眼鏡を掛けるとたまらないです。 ジャックの口元とサングラスのバランスがたまらないんですよね。 役を演じるにあたり眼鏡が必要だった作品で浮かぶのはNHKの番組で画家の藤田嗣治さん、放浪の俳人・山頭火を演じた時ですね。ドラマで遠藤周作さんを演じた時も印象に残っています。みなさん眼鏡が顔の一部になっていますからね。自分の出る作品は自分では恥ずかしくて見ることが出来ないのですが(笑)。 どんな眼鏡屋さんが良いかと聞かれたらやはり白山眼鏡店の様なお店が良いです! 清潔感があってお店の方も信頼出来ます。 もし自分が眼鏡店の店主を演じるとすれば…… 。むぅそうだなぁ。お客様の事を見ていない様でいて、実は一瞬でしっかりとお客様の雰囲気を掴んでる。その人が身につけている洋服、髪型、歩き方全てを感じとっているんだけれど、お客様に決して見破られない感じでお客様の注文に即反応出来る人がいいな。ちょっと考えるようなフリをしてその人に似合いそうな眼鏡をまずは2つほど静かに差し出してしばらくお客様の様子を伺い、そして最後にとっておきの眼鏡を柔かぁ〜く差し出し透き通るような声で「どうですか〜? お客様にはこれが1番似合うでぇ〜ざんがしょ?」って言う店主さん。 もし魔法の眼鏡なんてものがあるとしたら……。自分の好きな人の前では眼鏡のレンズが透明で、ちょっと苦手な人の前だと少し色がついて、もっともっと苦手な人の前だとレンズが真っ黒になる。もちろん遠近両用のレンズで(老眼のため)。 やはり眼鏡はぼくにとって自分の大切な眼と心を守ってくれる大事な大事なものです。生涯決して手放せない、絶対になくなってはならない大切な存在です。うおー!!! PROFILE 竹中 直人 1956年神奈川県生まれ。多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。1983年に『ザ・テレビ演芸』でデビュー。1996年にはNHK大河ドラマ『秀吉』で主演を務め高視聴率を記録する。俳優として活動する一方で映画監督もこなすなどマルチな才能が高く評価されており、『日本アカデミー賞』最優秀主演男優賞など多数の受賞歴をもつ。2021年に劇場版映画『ゾッキ』では自身8作目となる監督作品が公開予定。